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 この度、Calamari Inc.では、彫刻家・近藤祐史と美術家・遠山裕崇による新作展「Split Ex.」を開催いたします。これまで私たちは美術に関する印刷物や書籍、WEBなどのデザインを数多く手掛け、アートスペースの設立にも携わるなど、美術との関係性に重きを置くデザイン事務所として活動してまいりました。今回の展覧会は、私たちがその活動の最初期から注目し、少なくない関心と共感を抱いてきた両作家の姿勢やその作品を、ギャラリーや美術館とは少し異なる視座からご紹介できればと考え企画したものです。
 展覧会名の「Split Ex.」とは、複数のアーティストの音源を1枚にまとめたレコード「スプリットEP」をもじった造語で、事務所として活用している民家の部屋や廊下を分割(split)し、各々の作品を交わらせることなく展示するその方法に由来しています。また、2人が採用している彫刻と絵画という形式の不和(split up)も暗に指し示しています。
 近藤祐史は主に塑像の手法で自刻像を制作している彫刻家です。自らの似姿ではあっても、極めて彼岸的であり非現実的な主題を持ったその作品は、セメント素材による無機質な表面に、服の襞や皮膚の皺などの細部がリアリスティックに再現され、台座を極力用いない展示方法も相俟って独特の存在感を有しています。
 遠山裕崇は主に自ら撮影した写真を画布に投影して絵画を制作する美術家です。その絵には投影のフレームアウトにおいて生じる黒い縁や、ボケ、ゴーストといった写真固有の効果までもが油絵具、岩絵具、蜜蝋を用いて精密に描き込まれており、そのことによって鑑賞者は描かれた対象に没入することができず、絵画という現象そのものを見ることになります。
 この度の展示は、各々の展示場所が分割されているがゆえに2つの個展とも言えますので、各々の作品をじっくりと時間をかけて鑑賞していただきたいと思っております。また2人の作品を行きつ戻りつしながら鑑賞するなかで、彫刻と絵画の不和あるいは親和性、共通項、差異などを見いだし、今日に至るまで造形芸術が抱え込んでいる諸問題や、これからの造形芸術の在り方について思考を巡らせる機会になればと考えております。